• 2024年12月22日 2:08 AM

環境エピジェネティクス 研究所

Laboratory of Environmental Epigenetics

09.ENUのReviewの執筆 

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おそらくBil1先生からの推挙で、この分野の国際誌のMutation Research誌に35ページの“Review of Mutagenicity of ENU」を当時国立衛研の森本和滋先生(元国立衛生研究所・現医薬品評価機構)と共著で3年程度をかけて出版しました。この総説は1993年の出版ですが、現在に至るまで150回程度引用されています(17)。化学に弱い私に、森本先生をご紹介くださったのは、林裕造先生(元安全センター病理部長・国衛研安全試験研究センター長)で、先生は昨年惜しくも逝去されました。林先生がずっと安全センターにおられたならば、私のセンターでの研究はもっと充実したものになっていたものと思うと、今思い出してもとても残念なことでした。

また、理研にゲノム科学研究部が創設され、その研究の一環として「ENUによるマウス飽和突然変異研究」が城石俊彦先生(元遺伝研教授・現理研バイオリソース研究所長)をリーダーとして開始され、私もおそらくはENUによるマウス突然変異誘発実験を日本で唯一実施した研究者として、共同研究員を3年間勤めました。私の役割は不安定なENUをマウスに投与する際の準備や留意点などを実験者に伝えることでした。毎月の会議では日本の優れたマウス遺伝学者などと議論することが出来、大きな刺激を受けました。

このプロジェクトはJackson研究所をはじめ、世界中で実施され、数多くの有用な変異マウスが得られています。今では「ゲノム編集」が遺伝学での先端技術となりつつありますが、未知の遺伝子の機能などの解明には、「ゲノム編集」の確実性などが不明な現在、有益な方法だと思います。「ゲノム編集」は遺伝子主導な方法ですが、「飽和突然変異」は表現型主導な方法であり、これらの両面からの展開がこれからのマウスゲノム解明には主要な戦略となるものと予想されます(18)。また同じ理研ゲノム研の林崎良英先生へ私がクロランブチルで誘発した染色体欠損マウスを譲渡し、これが先生の全ゲノムを切断して、電気泳動で一度に観察する全ゲノムランドマーク解析法(WGLR法)に使用されたこともなつかしい思い出です。

関連文献

  1. Shibuya. T. and K. Morimoto: A review of genotoxicity of 1-ethyl-1-nitrosourea. Mutation Res.  204,3-38, 1993
  2. 澁谷 徹:突然変異と疾患モデル、日本生化学会編、”新生化学実験講座、「19.動物実験法」、東京化学同人 東京pp345-358-、1991