• 2024年12月22日 3:10 AM

環境エピジェネティクス 研究所

Laboratory of Environmental Epigenetics

第6回 「人新生」

 先日の朝日新聞で、New York Timesからの記事を引用して、人類の活動による地球のさまざまな変容を、地球史における一つの章として提案された「人新世:じんしんせい・ひとしんせい」という名称の使用に関して「国際地質会議連合」傘下の「第4紀層序小員会」で反対多数で棄却されたという記事があった。
 
私が「人新生」という言葉を初めて目にしたのは、斎藤幸平の「人新生の資本論」を読んだ時であった。この本はその内容の斬新さから当時ベストセラーになっていた。彼独自の晩年のマルクスの資本論研究からの全く新しい資本論の解釈であった。この本の内容の斬新さから私は「人新生」という言葉に大きな関心をもってきた。「人新生」という言葉はオランダのクルッッユン(ノーベル化学賞受賞)の創作だということである。
 
ホモ・サピエンスによる農耕の誕生以来、ヒトはこの地球を独占して、文明という名のもとに産業革命以降
膨大なさまざまな工業製品などを生産して地球の資源を消費し、さまざまな環境問題を引き起こしてきている。その挙句が地球温暖化であった。その意味からも、「人新生」という名称はまさにうってつけだと考えられる。
 
「人新生」の採用に賛成のある委員の「人類の活動が地球に与えた影響は、地質学的時間のもっと深くにまで及んでいる。これを無視するなら、人類が地球に及ぼしている真の影響、現にある打撃を無視することになる」との言葉の持つ意味は深い。「人新生」という言葉は地質学ではまだ時期尚かもしれないが、環境破壊の面からはこれまでにホモ・サピエンスがやってきた愚行を記録するためには必要だと私には思われる。
 
最近の宇宙への移住に関する行動などには、私は全く腹立たしく思っている。これだけこの地球をさんざんに破壊しておいて、今度は宇宙に移住するなんて全く無責任なことである。巨万の富を持っているマスク氏など、自分の莫大な資産を使って、さっさと月へでも移住すればいいと思う。どうせ宇宙のどこかにホモ・サピエンスが移住しても、地球上でやってきたように領土問題による戦争や資源争いをやるに違いない。
 
 この地球の環境で、進化してきたホモ・サピエンスが無酸素で重力の少ない月へ移住するなんて、これまでの生物進化を無視することであり、まったくもってバカげたことだと思う。マスコミなどがもてはやしてはいるが、宇宙に移住したらもうホモ・サピエンスではなくなり、ここでも全く異なった種としての進化を遂げることになるのだと私は思っている。私はいつまでもこの地球に残り、残りの人生を全うすることを願っている。

毎年の厳しさ夏や人新生        徹