私は勝負事にはほとんど興味がないが、囲碁だけは「下手の横好き」で長年続けている。二人で交互に碁盤に打ち進め、毎回異なる一局を作っていく過程はとても面白い。将棋では、全く反対に同じに並べられた盤面から対局が始まる。また囲碁では勝敗は数値で示される。このように囲碁と将棋とでは全く異なる。
私はPCのソフト(Cosumi)を相手にほとんど毎日碁を打っている。碁の初心者は、ハンデーとして、星に黒石をおいてから対局が始まる。私は最初、9子おいてもこのソフトに勝てなかったが、今では4子で、ほぼ対等に戦えるまでになった。いつでもこいつががお相手で、もう千局以上も対局し、その差し手のくせもよく分かってきた。しかし、どうやらこのソフトも学習進化しているらしく、いつこれに石を置かないで、互先で勝負できるのか見通しがつかない。
碁では2,3の禁じ手以外、空いているところにはどこに石を打ってもいい。一手で全く情勢が異なってくるのがとても面白い。石を打つ場所は19路で19列の交点の361ヵ所もあるので、着手は無限にあることになる。だから、これまで、AIは碁の名人には到底勝てないと思われていた。しかし、AIは学習によって進化を続け、昨年ついに世界最強者を完膚なきまでに負かしてしまった。
不思議なのは、将棋では女性のプロの棋士はすべて、「女流棋士」を名乗っており。本当のプロの女性のプロ棋士はいないらしい。囲碁では、男性に対等とまではいかないが、女性のプロ棋士は多数存在している。この碁と将棋との違いはどこに由来するのだろう。一時「環境ホルモン」で男性脳、女性脳という概念がもてはやされたが、この点について、最新の脳科学では解明できないだろうか。
日本棋院は昨年、日本が世界に伍して戦うために、特別枠としてまだ実績も十分ではない、10歳の仲邑菫ちゃんをプロ棋士として認定した。彼女は一年間に、まあまあの成績を残し、男性棋士からも勝利を挙げた。将棋では、昨年女性の棋士(西山朋佳三段)がプロへの昇格を賭けていたが、惜しくも次点となり、プロへの昇格は来期以降に持ち越されたという。史上初の女性のプロ棋士の誕生のため、囲碁のように特別枠を設けてもよかったと思うのだが。
夕立にやっと終はれり烏鷺の争ひ 徹 (05/08/20)