近年、生物学および医学の多く分野で「エピジェネティクス(EG)」という言葉が新しい概念として脚光を浴びるようになってきました。そして私達を取りまくさまざまな環境因子によってEGの働きが攪乱される「環境エピジェネティクス(EEG)」による人々の健康への影響を多角的に評価する必要性が高まっています。この時期にあたり、私達は2008年に設立した“Tox21研究所“を、「環境エピジェネティクス研究所(LEEG)」と改称及び会社組織へ移行し、皆様からEEGを基にした調査研究の受託、情報発信等の活動に本格的に取り組むことといたしました。
私達を取り巻くさまざまな環境因子の中には「エピジェネティクス活性」を示す化学物質、栄養状態、放射線などの物理的条件、さらには親や社会からの養育条件などEEGを誘発するものがあることが認められつつあります。これらは人の体細胞に作用し、がんや生活習慣病、更には精神疾患などの原因となったり、逆にそれらを正常な状態に戻すような作用を持つものも見つかっています。さらに、これらの環境因子は生殖細胞における「エピジェネティクス継世代遺伝(ETI)」を誘発する可能性があり、直接その環境因子に暴露されていない世代にも様々な影響を与える可能性を持つことが注目されつつあります。
すなわち、1.EEGには疾患や障害のリスク面と、逆に疾病の改善や健康の増進などといったベネフィット面もあること、2.EEGは直接の暴露世代への影響だけでなく、生殖細胞を介して子孫への影響も評価していく必要があること、が重要なポイントとなります。 しかしEEGはまだ新しい研究分野で、この概念を取り入れた研究は少なく、それらを有機的に結びつけるための調査研究は急務であり、それにより大きな成果発展が期待できるものと確信しております。
私達は、この分野では”Tox21”研究所としての10年以上の経験を持ち、さらに既存の任意団体である「健康エピジェネティックネットワーク」とも密接に情報の交流を行っております。さらに2007年設立されたEEG分野の研究者の集まりである「環境エピゲノミクス研究会(EEG)」とも密接な関係をもち、専門学会とも情報交換を密に行っております。医療、福祉、食品産業などの方々、また、環境問題へ関心をお持ちの方々、「環境エピジェネティクス研究所(LEEG)」へお問い合わせ、ご相談いただきますようお願いいたします。
2021年9月1日
「環境エピジェネティクス研究所(LEEG)」 澁谷 徹・堀谷幸治