北海道でどこが一番好きかと聞かれれば「小樽」と答えたい。「小樽」は昔は北海道の経済の中心であったが、今ではその地位を札幌に譲っている。日本銀行も札幌に移ってしまったようで、旧式な建物だけが残っている。「小樽」の魅力は、斜陽ということが現実に見られることが一番の魅力だと思う。盛んだったというニシン漁もさびれて、近くの岬には巨大な番屋が朽ちて残されていた。
定番の小樽運河も月並みだが、何度も行って写真を撮ったり、水彩画を描いたことがある。ある時、湾内クルーズに一人で乗ったが、他の25人程度のお客がすべて中国人で、ガイドが日本語で一生懸命説明しても、誰も聞いていなかった。それでも、船はスケジュールどうりに、広くもない湾内を1時間程度で一周していた。
駅前から「運河通り」へのゆっくりと下るなだらかな坂も好きである。その右手にかっての「手宮線」の軌道が、短いかい間だが残されている。昔に鉄道写真で「小樽築港機関区」所属というSLを見たことがあるが、その機関区はまだ残っているのだろうか。SLは雪の多い北海道にはよく似合っている。
「寿司屋横丁」も有名で、私はどういう訳か同じ店に3回通った。「勘」という字の付いたすし屋で、親父は新橋の「勘八」で修業したという。私がよく通った小田原の「かんぱち」を思い出した。しかし、奥さんの病気で店をたたんでしまった。岩手県の出身で、さきほどの「勘八」で修業したと言っていた。
小樽から札幌へは1時間もかからないが、途中余市海岸を通る。この海岸に下車したことはないが、峩々たる岩が続いており、ここはやはり北海道なのだという感じがするものだ。新千歳空港からのエアポート快速がほとんど小樽行きであるのは、いささか不思議だが、それだけ観光客が多いのだろうか?小樽とは不思議な街でもある。ある時、「小樽」のホテルで、人生初めてのカプセルホテルに泊まったことがある。予約金が何だか安いと思っていたら、カプセル部屋だった。周りのホテルにも空き部屋がなかったので腹を決めて泊まることにした。泊まってみると思ったより快適な一夜を過ごすことが出来た。何でも体験するということは大切なことである。
さいはての連絡船や多喜二の忌 徹 (小林多喜二は小樽出身) (12/12/20)