• 2024年12月22日 10:43 AM

環境エピジェネティクス 研究所

Laboratory of Environmental Epigenetics

Aryl hydrocarbon Receptorとimprinted genesを軸とした継世代エピジェネティック遺伝誘発機構

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Aryl hydrocarbon Receptorとimprinted genesを軸とした継世代エピジェネティック遺伝誘発機構
 堀谷 幸治・澁谷 徹(環境エピジェネティクス研究所)
Dioxin類およびPolycyclic aromatic hydrocarbonsは、ラット、マウスなどの哺乳類の世代試験において、非ばく露の世代においても何らかの毒性が認められる継世代エピジェネティック遺伝(TEI)を示すことが報告されており、ヒトにおいてもカネミ油症やベトナム戦争の枯葉剤散布などでTEIの可能性が指摘されている。その機構は多くが未解明であるが、これらの化学物質が、生体においてaryl hydrocarbon Receptor(AhR)と結合し、様々な生理作用を誘発することから、AhRとゲノムインプリント遺伝子(IGs)の関与が指摘されている(Ma,et al.,2015, Zhang,et al.,2019)。これらの文献調査からAhRとIGsの相互作用を軸にしたTEI誘発機構の作業仮説を提唱する。
TEI作業仮説:AhRの活性化はIGF2/H19などのIGsと相互作用を持ち、特に胎児期や生殖細胞形成過程においてエピジェネティックな変異を介した異常を誘発する可能性が示されている。AhRは内在的なcytokineをligandとして様々な生理機能を持つことが分かってきている。その中にDNAメチル化の維持酵素DNMT1,de novo DNAメチル化酵素DNMT3aおよびDNMT3b,能動的脱メチル化酵素TET2およびTET3などの制御作用がある(Wajda,et al.,2020)ことから、AhRの過度の活性化によって始原生殖細胞(PGC)期のIGF2/H19などIGsのリプログラミング過程およびその後の生殖細胞形成過程においてメチル化異常を生じさせる可能性がある。さらにそれにより、生殖細胞でIGF2の増加などからAhRの発現が増幅され(Justin,et al., 2014)TEIが誘発される。